生活者が商品やサービスを購入するまでの行動パターンは、画一的ではなく個別化が進んでいます。それに伴い検索の方法もさまざま広がっていきました。Google では、こうしたユーザーの期待に応え、より個々人にとって価値のある情報を提供するために、AI 技術を取り入れ、広告製品の革新を続けています。
米 Google Marketing Live 2025 にて、検索広告の責任者であるヴィディヤ・スリニヴァサン(VP and General Manager of Ads and Commerce)は「Google 検索は、単なる情報提供を超えて知性を深める場へと進化している」と言及しました。
Google 検索は AI によって、検索の背景にある意図まで深く理解できるようになりました。これにより、人々は思ったままに自然な言葉で情報を検索できるようになっています。画像検索やチャットでの検索など、検索のあり方も広がっています。AI の進化によって、検索という体験がよりパーソナライズされたものへ変わろうとしているのです。
このような方法で情報を探し、選び取るようになっている生活者に合わせて、企業としても AI を活かしきる広告運用がさらに重要になっています。そこで、Google Japan が提案するのが「Power Pack」です。
AI 時代の今後の広告運用「Power Pack」
Power Pack は、検索広告、P-MAX キャンペーン(以下、P-MAX)、そしてデマンド ジェネレーション キャンペーン(以下、Demand Gen)という、3 つのソリューションを掛け合わせた広告運用を指します。
単に 3 つの製品を使うだけのように聞こえるかもしれませんが、ポイントは、Google エコシステムの持つ、広く深いユーザーインサイトやシグナルから、AI が 3 つのサービスを横断して学習し、最適化できるということです。
以下では、検索広告、P-MAX、Demand Gen それぞれについて、近年の進化や Power Pack において果たす役割を解説します。
検索広告:クエリの背景にある「意図」まで理解できるように
Power Pack の 1 つ目として紹介する検索広告は、大規模言語モデル(LLM)の発展で大きく進化してきました。
従来の検索広告は、ユーザーが「何を」検索しているかに応じて、関連する広告を表示していました。しかし LLM の発展に伴い現在では、人々が「なぜ」検索しているかという意図(インテント)まで理解できるようになっています。「インテント マッチ」の精度が向上したのも、このためです。
これにより、マーケターが設定したキーワードを含まなくとも、関連する幅広い意図に広告を配信するインテント マッチと、入札価格も自動で最適化する「スマート自動入札」が運用の中心となっています。
最近では、新しいキーワードを追加する際に、100% インテント マッチで設定、運用するアカウントも増えています。
今後も、検索量は増え、クエリは多様化していくことが予想できます。これに対応する新機能が「検索キャンペーン向け AI 最大化設定」です。検索キャンペーンのパフォーマンスを強化する新しい設定項目で、これを有効にすると、キーワードだけでなくマーケターが設定した Web サイトやアセット情報も学習しながら、より関連したクエリに対して広告を配信できるようになります。
広告と検索内容の関連性が高まるだけでなく、最適なランディングページへの誘導も可能です。キーワード設定のみの運用では発見できなかった予想外のクエリに対して広告を届け、成果が期待できるのです。
P-MAX:チャネルを横断して配信を最適化
次に P-MAX は、Google 検索結果面に加えて、YouTube、Discover、マップなど、Google のさまざまな配信面に広告を配信できるツールです。
日本では 2021 年に提供を開始すると、AI の発展とともに配信の精度も向上。2024 年の 1 年間だけでも 90 以上の改良を通じて、P-MAX を活用している企業全体のコンバージョン数とコンバージョン値が 10% 以上向上しました(*1)。
P-MAX は、特定のキーワードを指定して運用するものではありません。ユーザーの検索行動や Web 上での行動に基づいて自動的に広告配信を最適化します。そのため、設定したキーワードベースの運用では捉えられていなかった検索クエリにも広告を広く届けることが可能です。P-MAX を通じて、従来想定できていなかった新たな顧客需要の獲得が増えているのです。
たとえばある旅行会社では『トレッキングシューズ サイズ感』というユーザーの検索から、旅行ツアーの予約に至ったケースがありました。これは、私たちも当初想定していなかった成果でした。
Demand Gen:検索面以外も横断
Power Pack の 3 つ目が、2023 年にリリースした Demand Gen です。強みとして、配信面、オーディエンス、フォーマットの 3 つが挙げられます。
まず配信面について。YouTube、Discover、Gmail など視覚的な広告面を使い、AI が最適なユーザーに広告を表示することで、ブランド認知からコンバージョンまでを促します。最近追加したディスプレイネットワークに加えて、今後は Google マップ へも配信面を広げていく予定です(*2)。
Google の幅広い広告面に配信するという点で、P-MAX と Demand Gen は同じように思えるかもしれません。ただし、検索結果面を配信先に含む P-MAX は、前述のとおり、ユーザーの検索行動シグナルや広告主のキャンペーン情報を組み合わせて、設定したコンバージョンポイントに対して広告配信を最適化します。そのため、特に検索結果面で強みを発揮する傾向にあります。一方の Demand Gen は、検索以外の配信面をカバーできるため、Google エコシステム全体で広告配信を最適化するには、これらを組み合わせて使うことが効果的です。
また Demand Gen のオーディエンスに関する強みは、検索行動を起こしていないものの、Google のエコシステム内にいるユーザーと効率的に接点を持てることです。たとえば、 YouTube 認知施策のオーディエンスリストを活用して認知から獲得までの一気通貫したマーケティング設計をしたり、リマーケティングやオーディエンスの拡張で効率とボリュームを同時に追求することもできます。
そして柔軟なフォーマットへの対応も、Demand Gen の強みです。横型やスクエアはもちろん、縦型、UGC コンテンツなどさまざまな動画フォーマットを配信面ごとに試し、運用しながら動画広告のパフォーマンスを最大化できます。
こうした強みを持った Demand Gen は、大きく 2 つの使い方が可能です。
1 つは送客。特定の情報を積極的に検索しているわけではない潜在顧客層に対しても、YouTube や Discover など Google のエコシステムのデータを用いてアプローチし、コンバージョンを後押しできるのです。
そしてもう 1 つが、獲得です。送客目的の運用では、クリックなどをコンバージョンポイントに設定することになりますが、検索広告や P-MAX と同じく、購入や見積もり請求といったより深いコンバージョンポイントで運用することで、検索以外の配信面をカバーして効率的な獲得を最大化できます。
Power Pack を掛け合わせて切れ目ない顧客接点を
Power Pack の検索広告、P-MAX、Demand Gen を、同じ Google 広告アカウント内で同じコンバージョンアクションを最適化対象に設定することで、AI がキャンペーンや配信面の垣根を越えて相互に学習し、アカウント全体のパフォーマンスを最大化できます。
Google が捉えるユーザーのインサイトやシグナルに、広告主のアセット、そして最先端の AI を組み合わせることで、複雑化した情報探索行動や購買行動に最適化したメッセージを届けられるようになります。これにより、マーケティングの最終目標に直結する効果的な広告投資が可能になり、ビジネス成長に貢献できるようになるのです。
Contributor:大河 文(ヘッド オブ パフォーマンス)/守川 美来 (パフォーマンスソリューション担当)/大越 明日成 (パフォーマンスソリューション担当)